全般性不安症とは?~色々なことが気になって不安になっていませんか?
日常生活で、些細なことから大きなことまで、次々と不安が頭をよぎり、落ち着かない気持ちになることはありませんか?
「こんなに心配ばかりしているのは、自分が弱いからだ」「もっとしっかりしなきゃ」と自分を責めてしまう方もいるかもしれません。
でも、それはもしかしたら、「全般性不安症」という心の状態が関係している可能性があります。
全般性不安症とは?:基本的な理解
全般性不安症は、日常生活のさまざまなことに対して、過度な心配や不安が慢性的に続いてしまうという特徴があります。特定の対象(例えば、飛行機に乗ることや人前で話すこと)に対する恐怖とは異なり、日常生活の些細な出来事(例えば、仕事の遅刻、家族の健康、お金のことなど)から、漠然とした将来のことまで、幅広い範囲にわたって不安を感じてしまいます。
まるで、心の中にいつも小さなアラームが鳴っているような、落ち着かない気持ちが続くいてしまうのです。
心配性との違いは?
誰でも心配することはありますが、全般性不安症は、その程度と持続期間、そしてそれが日常生活に与える影響が大きく異なります。
もし、上記のように、日常生活に支障が出るほどの強い不安が長く続いている場合は、全般性不安症の可能性があります。
全般性不安障症の具体的な症状:当てはまることはありませんか?
精神症状
日常生活のさまざまなことに対して、過剰でコントロールできない不安や心配が続きます。些細なことにも脅威を感じやすく、安全であるという基本的な感覚が低下している場合もあります。具体的には以下のような症状が見られます。
・持続的な不安と心配:特定の対象や状況だけでなく、仕事、人間関係、健康、経済状況など、幅広い事柄に対して慢性的に不安や心配を感じ続ける
・心配のコントロール困難:「考えすぎても仕方ない」と分かっていても、不安や心配を抑えたり、払拭したりすることが難しい
・落ち着きのなさ、いらだち:常に心が落ち着かず、そわそわした感じや、些細なことでイライラしやすい
・集中困難:不安や心配にとらわれてしまい、集中力や注意力が低下したり、仕事や家事、勉強などに集中できなくなる
・考えすぎ、悪いことばかり考える:ささいなことでも悪い方向に考えてしまい、将来に対する悲観的な見方が強くなる
・決断力の低下:ささいなことでも決断に時間がかかったり、決断すること自体に強い不安を感じたりする
・睡眠障害:寝つきが悪かったり、夜中に何度も目が覚めたり、眠りが浅かったりするなど、睡眠に関する問題が生じる。心配事で頭がいっぱいになり、リラックスして眠れないことも
身体症状
常に「何か良くないことが起こるかもしれない」という不安を感じているため、交感神経系が慢性的に活性化しやすくなります。これにより、心拍数の上昇、筋肉の緊張、呼吸の浅さなど、身体的な症状が現れやすく、以下のような症状が見られます。
・筋肉の緊張:肩、首、背中などが常にこわばったり、緊張したりする。頭痛や体の痛みとして感じることも
・疲労感、倦怠感:特に何かをしたわけではないのに、常に疲れた感じがしたり、だるさを感じるなど
・動悸、心拍数の増加:ドキドキしたり、心臓がドキドキ速くなったりするのを感じるなど
・発汗:緊張や不安から、汗をかきやすくなることも
・息切れ、呼吸困難:息苦しく感じたり、十分に息を吸えないような感じがする
・めまい、ふらつき:立ちくらみのような感覚や、体がふらふらする感じを覚えるなど
・吐き気、腹部の不快感:胃がムカムカしたり、お腹が痛くなったり、下痢や便秘になったりするなど
なぜ全般性不安症になるの?:原因と背景
全般性不安症の原因は一つだけではありません。生物学的、心理的、社会的な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
生物学的要因
脳内神経伝達物質の不均衡:
全般性不安症(GAD)では、脳内の3つの主要な神経伝達物質のバランスが崩れていると考えられています。
- GABA: 脳のブレーキが弱まり、不安を抑えにくい。
- セロトニン: 気分安定作用が低下し、不安や落ち込みやすい。
- ノルアドレナリン: ストレス反応が過剰で、常に緊張しやすい。
遺伝的要因:もしご家族の中に不安障害やうつ病の方がいらっしゃる場合、そうでない方と比べて、全般性不安症を発症する可能性が少し高くなることがわかっています。これは、特定の遺伝子が直接の原因になるわけではなく、不安を感じやすい、ストレスに弱いといった 特性 が、ご家族間で受け継がれやすいと考えられています。
脳構造と機能の差異:脳には、怖いと感じたり、不安になったりする気持ちを処理する扁桃体と、考えたり感情をコントロールしたりする前頭前野などの領域があります。全般性不安障害この前頭前野と扁桃体の連携がうまくいっていない可能性も指摘されています。イメージとしては、扁桃体が「怖い!」と感じた時に、前頭前野が「大丈夫だよ」となだめる働きが十分に発揮されないという感じです。
心理的要因
考え方の癖:
・さまざまなことに対して過度な心配が頭の中で繰り返され、止められない。
・起こる可能性の低い最悪の事態を想像し、過度に悲観的に考える。
・自分の行動や決断が悪い結果を招くのではないかと常に心配し、必要以上に責任を感じる。
・物事を0か100かというように極端で捉え、中間のグレーゾーンを認識しにくい。
・未来は悪い方向に進むと予測しがちで、良い結果を想像することが苦手。
・何事も完璧にこなそうとし、少しでも不完全な部分があると強い不安を感じる。
ストレスへの脆弱性:ストレスフルな出来事に対する反応が過剰であったり、ストレスからの回復に時間がかかったりする傾向があります。
過去の経験:幼少期のトラウマ体験、虐待、ネグレクト、親との分離などの辛い経験が、全般性不安症の発症リスクを高める可能性があります。
回避行動:不安を引き起こす可能性のある状況や思考を避けようとする行動が、長期的に見ると不安を悪化させることがあります。
社会的要因
ストレスの多い生活環境:仕事、人間関係、経済状況など、慢性的なストレスにさらされる環境にいると、全般性不安症を発症しやすくなることがあります。
サポートの不足:周囲からの理解やサポートが得られない場合、孤立感や不安感が増し、全般性不安症のリスクを高める可能性があります。
社会的なプレッシャー:完璧さや成功を求められるような社会的なプレッシャーも一因となることがあります。
これらの要因は単独で作用するのではなく、互いに影響し合いながら全般性不安症の発症に関与すると考えられています。例えば、遺伝的な脆弱性を持つ人が、ストレスの多い環境に置かれたり、否定的な考え方の癖を持っていたりすると、発症するリスクがより高まる可能性があります。
全般性不安症の治療法や対処法:安心して過ごすために
全般性不安症は、適切な治療を受けることで改善が期待できる心の病気です。主に以下の治療法があります。もしあなたが「もしかして、私も?」と思ったら、一人で悩まずに、専門の人に相談してみることが大切です。
医療機関に相談する
精神科や心療内科では医師が診断に基づき、抗不安薬や抗うつ薬などが処方されることがあります。薬は症状を和らげる助けになります。
カウンセリングを受ける
カウンセラーは、あなたの気持ちをじっくりと聞いて、どうして不安を感じやすいのか、どうすれば気持ちが楽になるのかを一緒に考え、サポートしてくれます。考え方のクセを直したり、不安と上手く付き合う方法を学んだりすることもできます。
お薬とカウンセリングは、どちらもあなたの心を支える大切な方法です。医師とカウンセラーが連携して、あなたに合ったサポートを考えてくれることもあります。
自分でできることも
専門家のサポートに加えて、自分でできることもあります。
リラクゼーション法の実践:深呼吸、瞑想、ヨガ、マッサージなど、心身をリラックスさせる方法を試してみましょう。
規則正しい生活:バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は、心身の安定につながります。
カフェインやアルコールを控える:これらのとり過ぎは不安を増強させる可能性があります。
ご自身の状態や状況に合わせて取り入れることが大切です。
まとめ
全般性不安症は、決して特別な病気ではありません。多くの方が悩みを抱え、そして適切な治療やサポートを受けることで改善されています。
もし、この記事を読んで「もしかしたら自分も…」と感じたなら、一人で悩まずに、ぜひ当クリニックにご相談ください。
あなたの不安に寄り添い、安心して過ごせる日々を取り戻すためのお手伝いをさせていただきます。