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頭から離れない考えや繰り返してしまう行動…それは強迫症かもしれません

心理ブログ  / 疾患

「何度も手を洗ってしまう」「鍵をかけたか何度も確認してしまう」 そんな風に、自分でも「やりすぎだ」と感じるのに、どうしてもやめられない考えや行動はありませんか?もしかするとそれは、「強迫症」のサインかもしれません。

強迫症は、生涯有病率が1~2%程度とされ、決して珍しい病気ではありません。当クリニックにも、同じような悩みを抱える方が多くいらっしゃっています。

このブログでは、以前ご紹介したAさん(仮名)とは異なるBさんのケースを例に、強迫症について詳しく説明していきます。

ふとしたことがきっかけで始まった強迫観念

Bさん(仮名)は、几帳面で責任感が強い性格です。職場でも信頼され、重要な仕事を任されていました。しかし、数ヶ月前から、些細なミスをしてしまったのではないかという不安が頭から離れなくなってしまったのです。

例えば、書類の誤字脱字がないか何度も確認したり、メールを送信した後も本当に正しく送れたのか不安になり何度も送信済みフォルダを確認したりするようになりました。最初は「念のため」と思っていた確認行為も、時間が経つにつれて頻度が増し、仕事に集中することが難しくなっていきました。

Bさんのように、真面目で責任感の強い方が、仕事上のプレッシャーや環境の変化などをきっかけに強迫的な考えにとらわれるようになることは少なくありません。

強迫症とは?~どんな症状が出るのか

Bさんの頭には、「もしミスがあったら大変なことになる」「自分のせいでプロジェクトが失敗したらどうしよう」といった考えが何度も浮かんできました。これらの考えはBさんにとって非常に苦痛で、打ち消そうとしてもなかなかできませんでした。

そして、不安を打ち消すために、何度も書類を見返したり、同僚に確認したりするなどの行為を繰り返すようになりました。これらの行為は一時的にBさんの不安を和らげるものの、すぐにまた不安が押し寄せてくるため、際限なく繰り返されてしまうのです。

強迫症の主な症状は、以下の2つです。

  • 強迫観念: 頭の中に繰り返し浮かんでくる、不合理で不快な考えやイメージ、衝動のことです。本人はそんな考えにとらわれたくないと思っているのに、自分の意思とは反して浮かんできてしまいます。
    例:「手が汚れているかもしれない」「鍵をかけ忘れたかもしれない」「誰かに危害を加えてしまうかもしれない」など

  • 強迫行為: 強迫観念によって引き起こされた不安を打ち消すために行う、儀式的な行動のことです。強迫行為を行うことで一時的に安心感を得られますが、根本的な解決にはならず、繰り返してしまうことが特徴です。
    例:何度も手を洗う、鍵やガスの元栓などを何度も確認する、特定の順番で物を並べる、特定の言葉を心の中で唱えるなど

Bさんの場合は、「ミスをしていないか」という強迫観念と、それを打ち消すための「確認行為」が主な症状でした。

発症の原因とは?~脳の機能やストレスが関係することも

強迫症の発症原因は、まだ完全には解明されていませんが、以下の要因が複雑に関わっていると考えられています。

  • 脳機能: 脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどのバランスの乱れや、特定の脳部位の機能異常が関与しているという研究があります。

  • 遺伝: 家族に強迫症の人がいる場合、発症リスクが高くなる傾向があります。

  • 環境要因・ストレス: 仕事や人間関係におけるストレス、過去のトラウマとなるような経験などが、発症のきっかけとなることがあります。Bさんの場合も、責任のある仕事を任されるようになったことによるプレッシャーが、強迫観念を強めた可能性があります。

  • 性格傾向: 元々几帳面、完璧主義、心配性などの性格傾向を持つ人は、強迫症を発症しやすいと言われています。

Bさんの場合、元々の几帳面な性格に加え、仕事のプレッシャーが重なり、些細なミスに対する過度な不安が強迫観念へと発展したと考えられます。

強迫症の治療

強迫症の治療には、薬物療法と認知行動療法を中心とした精神療法が行われます。

Bさんの場合、まず薬物療法によって不安や強迫観念を和らげることから始めました。並行して、認知行動療法にも取り組みました。認知行動療法では、Bさんがとらわれている強迫観念の内容を整理し、それがいかに現実的ではないかを理解したり、強迫行為を段階的に減らしていく練習(曝露反応妨害法)を行いました。

治療を進める中で、Bさんは「完璧でなければならない」という考え方の背景には、過去の経験からくる強い不安があることに気づきました。カウンセリングを通して、過去の経験と現在の苦しみを結びつけて理解することで、少しずつ強迫観念にとらわれる時間が減っていきました。

根気強く治療に取り組むことで、Bさんは以前のように仕事に集中できるようになり、確認行為の頻度も大幅に減らすことができました。

「もしかしたら…」と感じたら

もし、Bさんのように、頭から離れない考えや、やめたくてもやめられない行動があり、日常生活に支障が出ている場合は、一人で悩まずに医療機関に相談してみてください。強迫症は、適切な治療を受けることで改善が期待できる病気です。

当クリニックでは、強迫症の診療に加え、専門のカウンセラーによるカウンセリングも行っております。誰にも相談できずに苦しんでいる方は、勇気を出して私たちにご相談ください。あなたの悩みに寄り添い、一緒に解決していくお手伝いをさせていただきます。

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